第1回 適応障害はどんな症状が出る?
適応障害とは
適応障害とは、教科書的には「人間関係、経済的問題、身体疾患などに伴うさまざまな心理社会的なストレス因を明らかな契機として、反応性に情動、認知、行動の各側面にさまざまな症状が現れ、生活、学業、職業に適応不全の状態が一定期間持続し、ストレス因がなくなるかその影響が小さくなれば軽快するという特徴を持つストレス関連精神疾患である」と記載があります。
私も自分でもこれが何を意味しているのか完璧にはいまだに理解できていません。
適応障害について私の見解
これを私なりに解釈してみます。私なりに、適応障害とは、要は、「何か嫌なこと、辛いこと、ショックなことがあって、それに対して、精神症状が出ている状態」と考えています。嫌なこと、辛いこと、ショックなことことして、例えば、「上司や同僚からハラスメントを受けた」「単純に仕事が忙しくて体も心も疲れがたまってきた」「夫婦関係がうまくいかずストレスが溜まっている。離婚の危機である。もしくは、実際に離婚してしまった」「親の介護で疲弊している。または、長年介護してきた親が急に亡くなり生き甲斐が無くなった」などがよく聞かれる訴えかと思います。また、高校生だと「友人の裏切りにあった」「先生と合わない」「成績が下がってきた」「親とうまくいっていない」などですね。そのようなストレスがあったがあれば、人間誰でも落ち込んだり、不安になったりするものですよね?でも、ほとんどの方は時間とともにそのような問題を乗り越えられます。ただ、あまりに負荷が強かったり、本人側の問題で疲れがたまっていたり、もともと傷つきやすく不安になりやすい性格だったりすると、様々な症状が続いてしまうことがあります。様々な症状とは、簡単に挙げると、不安、落ち込み、情緒不安定、などです。場合によっては、イライラして暴力的になってしまったり、引きこもったり、死にたくなってしまったりする人もいます。
うつ病とどう違うのか
ここまで読んだ方は、「うつ病とどう違うのか?」と思った方もおられると思います。私自身も実際の診察上では、厳密には区別しないことも多いです。ただ、適応障害には必ず原因となる、または原因と推測されるようなストレス因があります。うつ病の場合、ストレス原因がなくても、うつ病を発症する方もおり、一概には言えません。ただ、出現する症状は落ち込み、不安、などの共通点も多く、治療も似通ったものになります。まずは、適応障害だろうが、うつ病だろうが、「ゆっくり休むこと」です。休むというのも、色々あります。完全に休職するのも手ですし、上司に相談して仕事を減らしてもらうか残業を免除してもらうのもいいでしょう。もちろん、上司が厳しくて、言い出せない、却下される、という話も聞きます。どうしようもないときは休職やむなしと思うケースもあります。患者さんによっては「私が休むと他の人に迷惑がかかるので休めない」とおっしゃる方もいます。私から言わせると、それはほぼ間違いで、本人が休んでも大体の職場というのはなんとかなります。もっと言うと、適応障害などで休職者が出た時に、人員補充するなど、なんとかすることが上司の仕事でもあると私は思います。その分、上司は患者さんより多く給料を得ているわけですから(笑)。そして、不思議なことに経営者の方は、「倒産した」「共同経営の人に裏切られた」など特別な場合を除いて、あまり適応障害になりません。おそらくですが、経営者のほうが、自分の働き方を自分で選べるからだと、考えられます。私はいつも、小学生の時に、先生に聞いた話を思い出します。「ある国の軍隊を二つのチームに分けて行進の訓練を行った。一つのチームには目的地やあとどの位で到着するのかを教えずに、もう一つのチームには教えた。教えられなかったチームのほうが脱落者が多かった」という話だったと思います。やはり、自分が今やっている仕事が会社、ひいては社会にどう役に立っているのかが分かりながら仕事をするのと、何となくやらされるのでは、疲れの度合いが違うのかもしれません。