⑤実際の診察室での問診の流れ
~てんかん診療医の方へ~

実際の診察室での問診の流れ

図60
私のてんかん外来における大体の問診の順番を書いたものです。この順番で聞いていくことになります。

図61
図53の失神の問診のコツでもお話ししましたが、てんかんの問診のコツはそのときにあったことを1つ1つ丁寧に聞くことです。問診する医師の頭の中では、てんかんの異常電気がどこから始まっているのか?そこからどこに伝播していくのか?反対側の脳に伝わり、二次性全般化するところまでいくのか?という風に電気の流れをイメージしながら問診するのがおすすめです。図61のように詳しく聞きましょう。

図62
ここまで勉強した方ならわかると思いますが、大事なのは発作(≒CPS、GTC)の前に何か前兆がなかったかを聞くことです。患者様はSPSのことをてんかん発作と思っていないことが普通ですので、こちらから聞く必要があります。例えば、後頭葉てんかんの患者様が、「意識を失う(≒CPS、GTC)前に、右上に赤い光が見えました。」と言ったとします。医師の頭の中では、「左後頭葉から始まったてんかんが二次性全般化したのかな?」と疑うことになります。私の場合、診察の流れで、CPS、GTCの有無を聞いた後で、「ところで、てんかん発作の中には本人の意識が保たれて、本人が発作に気づけるといった発作もあるんですよ。例えば、これまでに1分前後これから私が言う症状が急に始まって急に終わったってことはないですか?気持ちが悪くなる、恐怖感が出てくる、昔の懐かしいことを急に思い出す、変なにおいや音がしてくる、視界に変なものが見える、いつも同じ体の部分がしびれたり動いたりする、人の言っていることが音としては聞こえるけど理解できなくなる、とかです。どうですか?ぱっと始まって1分ぐらいでぱっと終わる症状ですよ?」のように聞くようにしています。ぱっと始まってぱっと終わるというところを強調して聞いています。

図63
そして、患者様は発作の後のことをよく話しますが、てんかんかどうかにはあまり役に立たないことが多いです。図63に書いたことが重要でしょうか。ただ、一人暮らしの人など発作の目撃情報がない場合は、参考にせざるを得ないこともあります。

図64
CPSが主訴の場合は、図64のようなセリフで問診することが多いです。ただし、医師がCPSの大体の症状を知っていないと、CPSをCPSと認識できないことになります。わからない人は動画を見返してください。

図65
CPSの問診は慣れるまでちょっと時間がかかります。この中でも一番重要なのは、①です。CPSの「ボーっとする」は半端ではなくボーっとします。例えば、油を使った料理中にCPSを起こして指が油に触れても気づかない、などです。完全に意識がないわけです。④のような例外も時々あるのですが、基本的には完全に意識がなくなって記憶もないのかを念入りに確認しましょう。やはり、以前述べたように③にも書いてある通り、医師が発作の真似をしてみせるのが手っ取り早いです。また、図にはありませんが、CPSと欠神発作の鑑別も重要です。一般的には年齢とともに欠神発作は改善していくことが多いのですが、一部の方は大人になっても欠神発作が改善せず続いているからです。欠神発作もボーっとはするのですが、一般的にCPSより発作時間が短く、発作後もうろう状態もあまり見られません。とはいえ、問診だけでの区別は難しく、脳波所見も参考にしながら総合的に考えることになります。

図66
さて、発作の目撃者の証言について考えてみましょう。まずはGTCからです。図66のように詳しく目の前で起きた発作の様子を完全に覚えていて、てんかんの診断がしやすいように医師に話してくれる方はまずいません。普通は目の前で人が発作を起こしたことに、焦っていて、記憶があいまいになります。だからこそ、医師の方からこんなかんじでした?と真似してみるのがよいのです。

図67
GTCが目の前で起こらないことも普通にあり得ます。そのようなときには①のようになります。一緒の家で暮らしているような場合ですね。すぐに家族が駆け付けた場合でも、すでに強直間代発作の強直相は終わっているかもしれません。ちなみに一般的にはPNESは人が見ているところで起きることが多いので、①や次の図の②のような証言を聞いたら、PNESの可能性は低いです。

図68
しかし、家族が一緒に暮らしていても、家族がたまたま何かで手が離せなかったり、家族仲がよくなかったりして、バタンと倒れるような音がしてから、すぐには見に行かない場合もあり得ます。そのようなときには②のような証言になるわけです。「部屋から出てきたら、意識がおかしそうで・・・」という場合も、発作後もうろう状態をそのようにとらえている可能性もありますよね?

図69
CPSの目撃情報はどうでしょうか?GTCと違い、目撃情報がすぐに診断に結びつくことが多いです。やはりGTCで全身けいれんがおこったインパクトと比べて、CPSのほうが目撃者も冷静に観察できるのかもしれません。

図70
CPSを途中から目撃する場合はどうでしょうか?とはいえ、GTCの時のように、バタンと倒れたり、ガタガタ震えて床の音がしたり、といったことが少ないので、CPSを途中から目撃するということはあまりありません。本当にたまたまタイミングが良かった時に限られます。ただ、以前説明した通り、高齢者の場合CPSの発作後もうろう状態が長く、認知症と間違われることもあるので注意しましょう。

図71
そのように聞き出した症状をまとめて、図71の例のように書き出します。この例の部分が記載できれば、てんかん外来の初診の7割は終了したと思っていい、と個人的には考えています。後は、ゆっくりアレルギーや既往歴などを聞いていきましょう。

図72
そして、最後にこの3つは必ず患者様に説明しましょう。まずは運転からです。

図73
私はほぼこの図のようなセリフを初診の患者様には伝えるようにしています。私の場合、てんかんでなくても、半年は運転を禁止したほうが良い、と伝えるようにしています。最後の発作から2年ですから、例えば、2020年9月20日が最終発作の人が、2022年9月20日まで発作無しならOKなのですが、万が一その人が2022年9月1日に発作が起きてしまったとすると、2024年9月1日まで発作無しが運転の条件になってしまいます。

図74
では、なぜ2年なのでしょうか?図の赤字の部分を理由としています。ウは感覚性のSPSのときは、1年経過観察して、運転に支障がないといった場合ですね。エは主に前頭葉てんかんの中でも、睡眠中にしか発作が起きないという人を前提に書かれたものです。ただし、運転免許はかなりナイーブな部分ですので、やはり主治医が最終的には責任をもって判断すべきでしょう。それでもよくわからない時は、私の場合は患者様に「各都道府県の免許センターに直接問い合わせてみてください」と伝えることがよくあります。このホームページを見ている埼玉県民の方はご存知でしょうが、埼玉県の場合は鴻巣市にありますね。

図75
妊娠もこの図のとおりのセリフを説明することが多いです。太字の部分が大切です。追加で説明すると、私は原則的に高校生以上を診療していますが、高1の女の子にも、いや、未成年だからこそ、将来的な妊娠の話をするようにしています。妊娠検査薬は一般的に妊娠5~6週で要請になると言われています(厳密には産婦人科の先生に聞いてみてください)。しかし、赤ちゃんの体の大事な臓器ができる器官形成期は妊娠4~8週なのです。この期間に薬などによる奇形も起こると言われています。何が言いたいかというと、「あ、妊娠している!」と気づいたときには、既に1,2週間は妊娠に気づかないまま抗てんかん薬を服用している、という事態にどうしてもなってしまうのです。なので、計画妊娠が必要なのですね。ただ、結論から言うと、図にも書いている通り、妊娠が判明したからと言って、そこから減薬するのは、医師も患者様もかなりの勇気がいります。実際は、みんなで話し合って決めるしかないのですが、利益と不利益を考慮して、薬を飲み続ける人が多い気がします。

図76
入浴については、図のように説明することが多いです。もっと言うと、シャワーだけにして、お風呂に入るときは、お風呂のふたもしておいたほうがより安全です。シャワーだけの入浴にしていたのに、他の家族のために湯舟にはお湯が張ってあり、浴室からでようとしたときに発作が起きて、バランスを崩してぼちゃんと湯舟に落ちてしまった人がこれまでにもいました。


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