➀てんかんの診断基準
~てんかん診療医の方へ~

てんかん診療を行う医師の方へ

このホームページでは医師3,4年目の方を対象としててんかんとはどのような病気か、などについて説明していきたいと思います。図1のような流れで説明していきたいと思います。あくまで指導医が若手医師に向けてわかりやすくてんかん診療の概要を教えるといった感じで書いていますので、正確さよりわかりやすさを優先させていますので、ご理解ください。患者様が読むことも想定して、できるだけ易しく説明したつもりです。

図2
まずは、図2をご覧ください。これは年齢別のてんかんの発症数を表していますが、このグラフで強調したいのは、小児期以外にもてんかんは発症する!という点です。私は、医師になって数年の間、てんかんは小児期以外には発症しないと勘違いしていました。さらに、高齢者に至っては小児期よりも、発症しやすいのです。これは、脳梗塞や認知症を起こす可能性が高くなり、脳実質へのダメージが蓄積されるためと推察されます。とにかく、てんかんという病気は年齢に関係なく、脳がある全ての人類に発症しうる病気だと覚えておいてください。私もこれを読んでいるあなたも明日てんかんを発症する可能性がゼロではないわけです。

➀てんかんの診断基準

図3
さて、まずは、てんかんの診断基準とはどのようなものでしょうか?これは、図3のように、非誘発性の発作が24時間以上間隔を空けて2回起きることです。非誘発性というがポイントです。誘発性というのは、文字通り誘発されたものです。脳卒中や脳炎などいかにも刻々と脳が侵されていく病気の最中ならてんかん発作が起きそうですよね?また、医師であればアルコール依存症の患者がお酒をやめた時に離脱でけいれんをおこすことがあることも知っていると思います。このようにいかにも誘発された意識障害やけいれんなどは、てんかん発作とはカウントしません。要するに、体調がいいはずなのに突然てんかん発作が起こる、しかも、それが1回きりではなく、時間をおいて繰り返すということこそがてんかん発作の特徴なのです。

図4
さて、どうして2回なのでしょうか?それは図4のように、1回発作を起こした人が2回目を起こす確率と、2回目発作を起こした人が3回目を起こす確率では、後者のほうがぐっと上がるからです。実際私の外来で、ある方が発作が2回起きたので、「てんかんですので、薬を飲みましょう」と説明しても、飲みたがらない方が一定の割合でいます。そのような方には「では、3回目の発作を待ちましょうか。起きなければそれでいいわけだし、3回目が起きたらさすがに飲んだほうがいいと思いますよ。」と言って、受診をいったん終了にすることがあります。すると、私の経験ですが、そのような方の半分以上の方が3回目を起こして、自ら受診し薬を飲むことに同意します。

図5
しかし、例外的に1回の発作でてんかんと診断する場合もあります。図5の①、②の場合です。細かい説明は省きますが、要するに、先ほど説明した図4とは違って、①、②の場合は、2回目のてんかん発作を起こす確率が、非常に高くなるわけです。

図6
よく用いられるてんかんの分類が図6になります。また後程説明しますが、部分てんかん(現在では焦点性てんかんと言ったりもします。今後、このホームページでも、部分、焦点性と二つの用語が出てくるかもしませんが、基本的に同じものと理解ください)とは、脳のある一部分から脳神経細胞の異常興奮が始まり、それが発作の症状を起こしていくてんかんです。この脳のてんかん発作の出発点のことを焦点と呼びます。全般てんかんというのは、脳の全体の神経細胞が一気に興奮して起きるてんかんです。また、特発性という言葉は、頭にてんかんを起こしそうな原因がない(厳密にいうと、現時点で原因が画像や遺伝子など同定されていない)、という意味です。症候性という言葉は、頭にてんかんの原因になりそうなものがある、という意味です。例えば、脳卒中、脳腫瘍、生まれながらの脳の奇形、海馬硬化、などです。図11、12を見てくれるとわかりやすいかもしれません。以上のような、用語を組み合わせて、図6のような4分類がよく使われています。4分類の特徴は大事なので、ここで解説します。

特発性部分てんかん

ここに属するグループのてんかんは小児期に始まり、思春期までにほとんど治ってしまうという特徴があります。もちろん例外はありますが・・・。なので、小児科時代に診断と治療が終結することが多く、精神科医である私は恥ずかしながらほとんど経験がありません。

症候性部分てんかん

ここに属するグループのてんかんは、小児期から高齢者まで幅広い世代で発症します。私が診察している患者さんのほぼ7~8割の方がここグループに属します。薬が効く人、効かない人も様々です。経験的には薬が効く人が50~60%ぐらいでしょうか。とくに後述する内側側頭葉てんかんが重要なてんかんとなります。

特発性全般てんかん

ここに属するグループのてんかんは、主に小児期~思春期に発症します。特発性部分てんかんほど治りやすくはありませんが、症候性部分てんかんよりは治りやすいてんかんです。経験的には70~80%の方が、薬で発作が抑えられます。

症候性全般てんかん

ここに属するグループのてんかんは、小児期に発症し、この4分類のなかでは最も予後が悪い(治りが悪い)グループとなります。知的障害を伴うことも多く、薬を複数試しても発作もなかなか抑えることができません。私がこのグループの方を診察することもありますが、そのほぼ全てが小児科医からのバトンタッチした方です。このように小児科から大人の科の医師にバトンタッチすることをキャリーオーバーと言います。残念ながら、小児科時代に薬をすでにいろいろ試されていることが多く、私の経験上、私が主治医になってから劇的に発作が減った人はほとんどいません。発作は止まらなくても、患者様本人は年齢を重ねていきますし、それと並行して、保護者も年齢を重ねていきますので、福祉や行政的なサポートという長期的な視点が必要になってきます。障害者手帳、障害年金などの知識も必要になってきます。

図7
このホームページでは、大人のてんかんを主に解説していきますので、図7のように、特発性部分てんかんと症候性全般てんかんは解説を省略します。この分類のてんかんは小児科医が最も得意としています。というか、私の力量ではあまり解説できません・・・。なので、今後、症候性部分てんかんと、特発性全般てんかんに絞って説明していきます。とにかく、最低でも部分てんかんなのか全般てんかんかは見分ける必要があります。なぜなら効く薬が違うからです。このことは、後でまた説明しようと思います。

図8
このホームページだけで全てのてんかんを網羅的に説明することは不可能ですので、さらに、絞りましょう。はっきり言って、症候性部分てんかんで一番大事なてんかんは、内側側頭葉てんかんです。これは、単純に患者数が多く、大人のてんかんにおいては最も重要と言えると思います。また、特発性全般てんかんで一番大事なてんかんは、若年ミオクロニーてんかんです。なぜ、大事かというと、上述の通り、特発性全般てんかんは小児期から思春期に発症するのですが、その中でも若年ミオクロニーてんかんは比較的発症年齢が高いてんかんなのです。つまり、基本的に高校生以上を診察している精神科医である私にも受診しやすいほぼ唯一の(!?)特発性全般てんかんです。他のてんかんの方はとっくに小児科を受診して、診断をつけられていることが多いのです。


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