てんかんとてんかん発作

てんかんとてんかん発作

てんかん発作とは実際に起こる症状のことです。そして、てんかんとは病名のことです。例えば、心筋梗塞で、胸痛が起こるのは皆さんご存知かもしれません。この場合、胸痛が症状、心筋梗塞が病名ですよね。それと同じように、てんかん発作とてんかんは区別があります。

てんかんの原因

てんかんが発症する原因は様々です。大きく特発性てんかんと症候性てんかんに分かれます。特発性てんかんとは、現時点で原因がMRI画像や遺伝子などに見つからないてんかんのことです。症候性てんかんとは、脳梗塞や脳腫瘍や脳挫傷など、脳に何らかの障害があり、それが原因となっているてんかんのことです。

てんかん発作の分類

てんかん発作の分類 図のように脳のある一部から始まる発作を部分発作または焦点性発作と呼びます。また、脳全体が一気に興奮する発作のことを全般発作と呼びます。それぞれ、代表的なものを説明していきます。ちなみに、脳は、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉の大きく四つに分けられます。

部分発作

単純部分発作

患者様の意識が保たれる発作です。なので、患者様は自分の発作を覚えています。例えば、前頭葉の興奮であれば顔がピクピクする発作になりますし、側頭葉の外側の発作であれば実際には聞こえないはずの音が聞こえます。いわゆる幻聴ですね。他にも多くの発作があり、変なにおいがする、昔懐かしい感じがする、視界に光が見える、体の一部が動いたりしびれたりする、などの症状が起こることがあります。

複雑部分発作

患者様が意識を失いますが、全身けいれんは起こらない発作です。ボーっとして立ち尽くす人もいれば、ボーっとして歩いて行ってしまう人もいます。転倒することは稀です。もちろんボーっとしているので、発作の間の記憶はありません。発作後にもうろう状態を伴うこともあります。一番有名なのは側頭葉の内側が興奮した時の発作です。ボーっとしている最中に手や口をもぞもぞと動かすこともあり、これを自動症と呼びます。

全般発作

➀強直間代発作(きょうちょくかんたいほっさ)

皆さんがてんかんと聞いて一番先に思い浮かべる発作だと思います。グーっと全身に力が入り硬直し、1分前後したら、ガクガクと激しく体が震えます。合計2~3分で終わることが多いです。発作の後は、意識がもうろうとする事や、そのまま眠ってしまう人もいます。もちろん意識を失っているので、発作中の記憶はありません。少し難しい話になりますが、最初は部分発作で始まった発作が、脳の全体に興奮がいきわたると強直間代発作を起こすことがあります。これを二次性全般化と呼び、てんかんの実臨床ではよく見られる現象です。

②強直発作(きょうちょくほっさ)

グーっと力が入るだけの発作です。数秒~数十秒持続し、意識を失います。子供時代に発症する難治てんかんで見られる症状です。グーっと力が入ったまま、顔から倒れたりして歯を折るなど怪我をする恐れがあります。

③欠神発作(けっしんほっさ)

数秒~数十秒の間意識を失ってしまう発作です。ボーっとして意識を失うのですが、複雑部分発作と違い、発作後にもうろう状態を伴わないので、欠神発作が終わると、すぐに患者様はしゃべることができます。小児期に多くおこる発作です。

④ミオクロニー発作

両手、場合によって両足が一瞬だけピクっとなる発作です。後ろから急に「ワッ」と驚かされたら、体がびくっとしますよね?そのような症状が手を中心にみられます。患者様は発作が起こったときに食事をしていれば箸を落とすことが多いですし、スマホをいじっていればスマホを落とすことが多いです。

てんかん重積状態

5分以上発作が続く状態を重積状態と呼びます。このような状態になると、自然に発作が終わる可能性が低くなり、発作を止める注射を打たないと発作が止まりにくい状態です。 なので、私も普段から患者様に「5分以上発作やけいれんが続くようなら救急車を呼んで総合病院に行ってください」と説明しています。

てんかんの種類

てんかんには特発性、症候性があり、また、部分発作と全般発作があるのでしたね。それを組み合わせたのが次の図です。

てんかんの種類

この図のようにおおまかに4つに分けると整理がしやすいのです。

特発性部分てんかん

小児期に多いてんかんです。そして、ここに属するてんかんのほとんどは、予後良好(治りがいい、という意味です)です。思春期までには発作が自然と止まることも多いです。薬も効き易いてんかんです。よって、普段高校生以上を診療している私は、正直診療したことがありません。私のところに来る前の年齢でほとんどの人が治ってしまうからです。

症候性部分てんかん

年齢に関係なく起こるてんかんのグループです。私が普段一番診療しているてんかんのグループとも言えます。一番数が多いのは側頭葉てんかんです。側頭葉てんかんは複雑部分発作(ボーっとするだけでけいれんしない発作)をよく起こします。そして、他のてんかんではよく起きる強直間代発作(いわゆる全身けいれん)が側頭葉てんかんでは起きにくいと言われています。さすがに強直間代発作を起こすと、周囲の人もびっくり仰天しますから、すぐにてんかん疑いで専門病院にかかるように勧められます。しかし、複雑部分発作はボーっとするだけのことが多く、周囲の人もまさかてんかんとは思わないのです。よって、受診や診断が遅れることもあります。私の経験上、薬が効く確率は5~7割程度です。

特発性全般てんかん

小児期から思春期に発症するてんかんです。中年以降で特発性全般てんかんを発症することはほとんどありません。特発性部分てんかんほどは予後良好ではありませんが、それでも一般的には薬が効き易いてんかんのグループです。先ほども触れましたが、私は高校生以上を対象に診療していますので、このグループの中で一番お目にかかるのが、若年ミオクロニーてんかんです。

  1. 思春期の人が
  2. 朝に
  3. ミオクロニー発作(突然両手がピクっとする発作)を起こす

という、3つの特徴が有名です。

症候性全般てんかん

新生児期から乳児期に発症することが多いてんかんです。残念ながら予後が悪い(治りが悪い)ことが多く、様々な薬を試しても発作は止まらない人が多いです。さらに、知的障害も伴うことが多いです。私が普段診療しているこのてんかんのグループの方はほぼ100%小児科の先生からの紹介です。「もう年齢が大きくなってきたので、大人の科で診てもらってください」と小児科の先生に言われ、私の外来に紹介状を持ってくるというパターンがほとんどです。なので、私が診断をすることはありません。また、小児科の時期に色々な抗てんかん薬を試されていることが多く、私が診療を引き継いでから薬を調整したからといって、発作の劇的な改善は望めないことが多いです。しかし、それでも、障害年金の書類や種々の診断書を書いたり、両親が高齢化してきた場合には患者様本人を施設に入れるように紹介状を書いたり、知的障害からくる興奮、多動などの行動を向精神薬で改善させたりと、医師ができる仕事は意外とあります。薬を出して発作を抑えるだけがてんかん専門医の仕事ではなく、患者様の生活全体をイメージして診療にあたる必要があります。まあ、これは他のグループのてんかんの患者様においてもそうなのですが・・・。


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