➂各論
【様々なてんかんについて】
~てんかん診療医の方へ~

➂各論【様々なてんかんについて】

次に、③です。これまでにてんかん発作の症状について学んできましたが、ここからは、様々なてんかんについて学んでいきます。

図36
ここで、用語の説明をします。この図で何が言いたいのかというと、症状としてのてんかん発作と病名としてのてんかんは違うということです。例えば、心筋梗塞という病気には、胸痛や放散痛(胸以外のところに伝わる痛み)という症状が見られる、という説明はしっくりきますよね?同様に、うつ病という病気には、意欲低下や不眠といった症状が見られるという文章も理解できると思います。てんかんにおいては、内側側頭葉てんかんという病気には、ぼーっとするCPSやデジャヴのSPSという症状がみられる、といった表現になります。てんかん発作とてんかんは区別してください。

図38
このような図を以前出しましたね。症候性部分てんかんから説明していきます。以前説明した通り、私が診ている大人のてんかんは大部分が症候性部分てんかんに当てはまります。

図39
一番重要でまず勉強すべきてんかんは内側側頭葉てんかんです(外側側頭葉てんかんとは違う病気なので注意してください)。患者数が多いことと、脳外科的手術で治ることもある、というのが重要です。①、②といった症状が出ます。以前解説しましたね。ちなみに、上行性腹部症状というのは、胃のあたりから上がってくるような気持ち悪さのことです。そして、意外と知られていないのが③です。GTCを起こしにくく、CPSをおこしてボーっとしておしまいということが多く、全身けいれんはあまりしないのです。私が以前、脳外科の先生に教えていただいたのですが、脳には海馬を中心とするパペツの回路という神経のつながりが存在していて、どうやら内側側頭葉てんかんではそのパペツの回路内でぐるぐる異常電気が回ってしまい、なかなか反対側の脳に電気興奮がいかないのだそうです。だから、二次性全般化をおこしにくい、つまり、全身けいれんを起こしにくいということらしいです。

図40
④の熱性けいれんとは赤ちゃんの時に熱が出てけいれんする病気のことです。熱性けいれんと内側側頭葉てんかんの関連性もよく言われています。⑤も一般にはあまり知られていないことですが、内側側頭葉てんかんとはこのような年代別の流れを取ることが多いと言われています。⑥以降は専門的ですので省略します。

図41
前頭葉で発作が起こると上記のようなSPS、CPSが起こることは既に述べた通りです。前頭葉てんかんの特徴として、睡眠中や明け方に多いという特徴があります。さらに、一度起こると1日に何度も起きること(群発する)もあります。私の外来にも「寝ているときに急にけいれんします。私としてはいつも通り寝たつもりなのですが、いつも気づくと救急車の中なのです。」という方が一定数いらっしゃいます。寝ているときにしか発作が起きない、といったら前頭葉てんかんを思い浮かべることが多いです。

図42
次は外側側頭葉てんかんです。SPSについては説明済みですね。内側側頭葉に伝播してCPSを起こすこともあります。また、反対側の脳にも伝播しやすくsGTCも起こしやすいです。患者様の訴えとしては、「変な音が聞こえてきたと思ったら、気づいたら意識を失っていました。」ということになります。繰り返しますが、SPSだけでおわるパターンもあります。

図43
これもほとんど説明不要でしょう。点や光がみえるSPSが特徴的なのでした。内側側頭葉や前頭葉に伝播することもあれば、反対側の脳につたわり二次性全般化することもあります。

図44
頭頂葉てんかんは比較的珍しいてんかんです。説明は省略します。これで、症候性部分てんかんはおしまいです。

図45
再び同じ図です。次はやっと、特発性全般てんかんです。しかし、大人のてんかんを診察するうえでとても重要なてんかんは一つだけ(!?)です。それは、若年ミオクロニーてんかん(Juvenile myoclonic  epilepsy、通称JME)です。

図46
①~③の特徴が有名です。よくあるパターンとして、中学生や高校生が朝起きて顔を洗ったり、朝ご飯を洗っているときに両手がぴくっとしたり、全身けいれんを起こしたりする、といったものです。ちなみに起床時というのは朝に限りません。寝て起きてから時間のたっていない時間という意味なので、昼寝をして起きた直後でも構いません。ここで、患者様が「ぴくっとはするけど、両手じゃないです。左手だけです。」とおっしゃることがあります。ミオクロニー発作には左右差があることも多く、そのような訴えになるわけです。しかし、そのピクつきが一瞬であり、思春期発症でしかも、起床後に多いようならJMEでほぼ決まりです。脳波にも特徴的な波が現れますが、ここでは省略します。

図47
では、それ以外の特発性全般てんかん(Idiopathic generalized epilepsy、IGE)はどのように理解すればいいのでしょうか?この図は完全に私の考えを表したもので、正確ではないのかもしれませんが、実臨床においては、私はこの図のように考えています。要は、JME以外の全般てんかんは一応IGEと呼んでおくのですね。他のてんかん専門医から批判はあるかもしれませんが、全般てんかんを突き詰めるより、部分か全般かだけをちゃんと見分けることのほうが臨床上は有効だと考えているからです。

図48
さて、私の経験上の図になります。焦点性てんかんなのか全般てんかんなのかはそれぞれ効く薬が違うので、区別することが重要です。一般的に、思春期以降に発症するてんかんは焦点性てんかんが全般てんかんより多いです。さらに、全般てんかんは普通は20代までに発症することが多いです。なので、乱暴な言い方ですが、中年以降発症というだけで、ぐっと焦点性てんかんである確率が高まると私は考えています。

図49
この図もこのような傾向があるというだけで、絶対に正しいわけではありません。しかし、やはり参考にはなると思います。実際、私の場合、思春期で起床直後に発作が起きたと言われるとどうしてもJMEを一番に考えます(厳密にいうと覚醒時大発作てんかんというてんかんの可能性もありますが…)し、睡眠中にしか発作が起きないと言われると前頭葉てんかんを考えたくなるからです。


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