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第11回 どのようなときに休職すべきか

第11回です。今回は、主にうつ病や適応障害になった場合に、休職すべきなのかどうかを書いていきたいと思います。結論から言うと、はっきりしたルールはないです。ただ、患者様の個人的な考え方や会社のルールなどいろんな要素を加味して、個別に判断することになります。よくあるケースを何個か例として挙げてみましょう。

 

その1 休職を医師の方から勧める場合

 

精神科医により、これもばらつきはあります。私の場合は、「職場に行こうとしたら涙が出てきて、朝から布団から起き上がれなかった」「職場に行こうとして着替えたのに、玄関で足がすくんで動けなくなった、または職場の近くまで行ったが、怖くなり引き返して自宅に帰ってしまった」「職場に行ってはいるが、気分が落ち込み、集中力が持たず、以前ならしなかったうっかりミスが増えて、仕事にならなくなってきた」「同僚や上司に顔色が悪いと言われた。精神科に行けと言われた」などの場合に、休職の診断書を書くことが多いです。特に、中年で妻子があり一家の稼ぎ頭である男性が、仕事に行けないというのは、一大事と言っていいでしょう。女性の場合、やはり家や職場で自然と涙が出ると話すことが多く、これもある意味異常事態と言っていいでしょう。私も初期研修医の時に、慣れない救急の患者対応で睡眠不足の日が続き、心身ともにかなり疲れ果てた時期がありましたが、それでも泣くことはしなかったので。。。そして、ここに自殺したい気持ちなどもあるようでしたら、精神科への入院も勧めます。一般的にいって、長年真面目に勤めていた会社で、不適応になった場合、例外的な場合を除いて、ほとんど休職を勧めることが多いです。

 

その2 医師と患者で話し合って休職を決める場合

 

その1のケースほど、まだ重症ではないが、休職を選択するケースです。もちろん、私としても患者様の言われるがままに休職の診断書を出すわけにはいきません。ただ、「仕事には行けているが明らかにパフォーマンスが下がってきている」「疲れが取れなくなってきていて、辛い。以前は一晩寝たり、土日を挟めば頑張れたのに・・・」「食欲がない。眠れなくなってきている」という場合、早めに休職して本来の自分まで回復することはいい選択かもしれません。ただ、軽症すぎるのに休職してしまうと、会社によっては反応が悪く、「え?休職?元気そうに見えたけど」と思われると、今後、本人が復職したり、復職後に働く時に、色々とやりづらくなってしまう可能性があります。そこも含めて検討していく必要があるでしょう。安易に休職をしすぎるのも問題ということです。とはいえ、会社の人たちというのも一般的には精神科のことには詳しくなく、「一見そこまでうつが重症そうに見えないけど実は重症」ということを見抜けるわけがないので、調子が悪いときはちゃんと休んだ方がいいです。いずれにしろ、個人を取り巻く環境など皆さん違いますので、診察の中で決めていくしかやりようがありません。

 

その3 休職を認めない場合

 

その3は、私のクリニックではまれに見られます。休職したいと患者様が言っても、私が認めない場合です。それは症状が軽症すぎる場合です。「何となくうつっぽいと思うから休みたい」「会社の上司に怒られた。パワハラだと思うから休みたい」となどの場合です。特に、若くて新卒で入社して間もない人に多いです。認めないと言っても、未来永劫認めないわけではなく、「もう少し頑張ってみたら?」と促す程度です。それでも調子が悪ければ休職もやむを得ません。私も精神科医なので、基本的には患者様の味方なのですが、「さすがにそれぐらいで休職したら今後職場にいづらくなるよ」程度のことでは休職はさせられません。ごく稀ですが、初診予約の段階で、「休職の診断書を書いてほしい。診断書を出すと約束してくれないなら受診したくない。」とおっしゃる方もいます。もちろん、「診断書が出るかどうかは、診察してみてから医師の判断次第」と事務の方には伝えてもらうようにしているのですが、そうすると、「じゃあ、いいです」と言って、電話を切られる方もいます。「休職の診断書を書いてほしい」のは全く悪いことではないのですが、それを条件にしてしまうと、診察が成り立たなくなりますので、私としても困ってしまいます。

 

今回は、以上のようになります。私のスタンスとしては、患者様を調子が悪いからこそメンタルクリニックを受診している、と理解しているので、基本的には診断書を出すことが多いです。もちろん、「それはいくらなんでもやりすぎ」という場合や、通院があまりに不規則でこちらの指示に従わない場合には希望に添えないことが多いです。

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