第7回です。今回はうつ病や適応障害の診断書について説明していきます。以下の記載はあくまで当院の場合、なのでご了承ください。当院に受診し、うつ病や適応障害と診断された場合、診断書を書く場合があります。ほとんどの場合、職場への診断書です。一番多いのは休職の診断書。その次が、職場にとりあえず今の診断名だけを伝える目的の診断書です。
とりあえずの診断書の場合
とりあえずの診断書の場合、例えば「落ち込み、不安などの症状がみられ、うつ病と診断する。当分の間、当院への受診の継続が必要である。」と書きます。これに続き、「職場環境の調整が必要である」と書くこともあります。診断書というのは大変デリケートなものです。時々、患者様から診断書に「パワハラがある旨を書いてほしい」「異動が好ましいと書いてほしい」と頼まれることがありますが、私の場合は断っています。それは、以前も書いた通り、パワハラかどうか決めるのは私でなく、会社の調査委員会や裁判所が決めることです。また、異動が好ましいと書いたときに、職場が困ってしまうことがあるからです。会社によっては、ギリギリの人数で現場を回していることもあり、容易には異動ができないことも多いのです。そこで、「異動が必要」と書いてしまうと、最悪の場合、「この職員は精神科医に自分に都合のいいように診断書を書いてもらった」「たんなるワガママ」という印象を与えかねません。長期的にみて、患者様に不利益になることがあるのです。これは、私は産業医の経験があるので、クリニックからの診断書を複数見た経験からきています。結局のところ、復職が近いときに、会社と相談して、元の職場がいいのか、異動するのがいいのか決めていくことが望ましいと思われます。
休職の診断書について
うつ状態が強く、休職が必要な場合、診断書に「4週間の自宅療養を要する」と記載します。先ほどと同様に、「パワハラがある」「異動が望ましい」とは書けません。基本的には休職中の方は2週間おきに受診していただくことが多いので、2回に1回のペースで休職の診断書を作成することが多いです。
復職の診断書について
さて、治療のおかげでよくなった場合、復職の診断書を書くことになります。「落ち込み、不安、などの症状は治療によって改善している。復職可能と判断する。」などと記載することが多いです。時々、「会社側から『〇月〇日から勤務可能』と書いてほしい、と言われた」と患者様から頼まれることがありますが、私は断っています。医師が勤務可能と判断したなら、極端な話、その日の内から働いていいという意味で作成しています。例えば今日が4月1日だとして、診察で、よし、もう治ったね、復職OKですね、となったとしましょう。そこで、例えば、会社の都合でキリがいいから、「4月9日の月曜日から復職可能と書いてほしい」と言われたとします。では、4月1日にそのような書類を書いた場合、4月2日~4月8日はどうなるのでしょうか?調子がよくて4月1日の時点で医師が働いていいとお墨付きを与えたのに、4月8日まで休む必要性とは??私はそこに矛盾を感じます。内科に行き、熱が下がって、復職する際に「会社側の都合で本当は4月1日に熱が下がったけど、4月8日まで熱が出たことにしてもらって、働けるのは4月9日からということにしておいてほしい」とはならないですよね。冷たい言い方ですが、私はあくまで、医師なので病状が治ったか?働けるのか?だけを記載して、いつから働いてもらうのかは会社側に判断してもらうようにしています。そのために産業医や人事部や上司がいるのですから。
診断書を書く絶対条件
特に休職の診断書を書く場合、2週間おきの受診が必要と書きました。診断書を書く際の条件は、「医師の指示通りに受診していること。治療に協力していること」です。時々、受診が不規則なのに、診断書だけ欲しがる方がおり、そのような方には診断書を断ることが多いです。建前上、医師の指示通りちゃんと受診し、治療にも主体的に参加している、なのにまだ治らない、だから休ませてほしい、というスタンスであるべきです。
今回は以上になります。全体的に説教がましくなってしまい、申し訳ありません。ただ、とても重要なことなので、ご理解いただけますと幸いです。